夢。

 

どこかの小さなライブハウス。

なぜか出演者の私は、ステージに立ってモジュラーシンセのつまみに手を伸ばそうとしている。

フロアの後ろの方で騒いでいる数人の男女。

間。

「静かになるまで6分かかりました」と言い、フェーダーをゆっくりと上げていく。

 

夢。

 

どこかの田舎町をひとりで歩いている。

道路が花壇になっていて、様々な種類の花で埋め尽くされており、車が通るときは縁石と縁石を渡すように大きな板をかぶせることになっている。
人が通るときには板をかぶせる必要はなく、花を踏まぬよう気をつければよいらしい。
道路のいたるところにあるスピーカーからは、30分ほどの尺のおばさんふたりの会話が繰り返し流れており、もう3周ほど聞いた気がする。
「もう一度やり直せたとしても、私たちはきっと同じことを選ぶわね」

 

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先月実家に帰ったとき、ふいに土を掘りたくなった。

日が変わる頃、家族を起こさぬように外へ出る。僕の実家のある街は、ニュータウンのくせして街灯が少なく真っ暗なので、iPhoneのライトをつけて地面に置き、スーパーの袋をかぶせて光を丸く拡げた。

気持ちはいたって冷静で、素手でガリガリと掘っていく。前日の雨でやわらかくなった土と、ときたま現れる小石の、感触の違いがよくわかる。たぶん10cmくらい、思っていたよりも早い段階で満足が訪れて、無意識に手のひらをはたいた。その音が結構響いて気持ちが良い。

爪の間に詰まった茶色と、穴の隣にできた山をみて、嬉しい気持ちになった。

 「穴を掘ると隣に山ができる」という現象が、最近とても気になっている。
なぜ突然掘りたくなったのかはわからない。だけど、わからないことをわからないままに出来るとき、あぁ自分は今落ち着いているな、と思う。

家に入ると、玄関の絨毯の上で愛犬が待っていた。私はそのままの手で、同じ色の身体をわしゃわしゃと撫でた。

 

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今一番嗅ぎたい匂いは、新品のテニスボールの缶を開けたときの匂い。

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いつだったか、吉祥寺で朝まで飲んで、気持ちいい酔いのまま、タクシーが捕まるまで走ろうと思って、いつの間にか家に着いていた。

朝のマジックアワーがとても綺麗だったのを、とてもよく覚えている。

タクシーが見つからなくて本当によかった。

 

家の近くに、梅の木がたくさん植わった土地がある。

すこしの間通らなかっただけで、新緑の葉をたくさんつけていた。

晴れの日にこの木のしたをひとが走り、髪と服と肌に木漏れ日がおちるところを想像した。

 

生活のなかで、蛍光ペンでアンダーラインを引きたくなるような風景が目の前に現れると、うなじのあたりがきゅっとしまるような気持ちがする。
この感覚をずっと覚えていたいと思う。

そして、それらを忘れることがないように、写真にするのだと思う。

 

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スパゲティミートソース。ひき肉が安かったから。 美味しかったが、すこし水っぽくなってしまった。小麦粉をもう少し入れたらよかった。100円ショップで買ったレンジでパスタが茹でられるキット、◎

 


そぼろ丼。安かったひき肉が余ったから。そぼろの山のてっぺんを少しへこませて、卵をそっとのせる。たぶん私は、卵を買った帰り道が一番優しい。

 

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夢。

 

真夏、山梨の田舎町、あるフェスの会場にいる。

スタジオラドムというステージで、SaToAが演奏しているのを眺めている。残り5分になったところで、裏でやっているROTH BART BARONを見るために移動をはじめる。ROTHはラインパークスという場所でやってるらしい。

 

会場はとてもひろく、Googleマップで検索をするが、なんどやっても岡山の似た名前のところがでてしまう。なんとか場所をつきとめ向かうのだが、とても険しい、道とも言えない道を通らねばならない。

 

崖から飛び出た刃物や枝に身体を擦りながら、どうにか会場に近づいていく。だんだんとROTHの声と、ドライアイスにノコギリをこするような音が聞こえてくる。が、着く直前にライブは終わってしまう。

 

れんがラインパークスのほうから満足気な表情でこちらへ向かってくる。私はれんから雪みたいな赤子を預けられる。抱きかかえると、赤子は少しずつ変化し、最終的に湯本駅前にある犬の銅像の姿に変貌を遂げる。

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キャベツの千切りは、文明の利器によるものより、ひとが包丁で切ったもののほうが美味しいという。
厚みに多少ばらつきがあったほうが、食感にあそびが生まれるのだそうだ。

 

近所によく行くとんかつ屋さんがある。
この店は老夫婦がふたりで切り盛りをしていて、基本的には奥さんが調理をし、旦那さんが出前の配達で動き回っている形だ。


兎にも角にも、奥さんの手際の良さが素晴らしい。みえるすべての行為--肉やキャベツを切るとき、パン粉をつけるとき、揚げるときなど--を前後にからだを揺らしながら行う。そのBPMが崩れることは決してない。


夫婦はとても仲が良く、狭い厨房を移動する際、すれ違う時にお尻をぶつけあったり、奥さんが卵の殻をゴミ箱にシュートして、その様子を眺めていた旦那さんが小さく手を叩いたりしていた。


後ろのテレビからは、「ドライブスルー葬儀」の紹介が流れている。車の窓から手を伸ばし、お焼香ボタンを押すと棺横にあるLEDの造花が光りお焼香完了とのこと。全く意味がわからない。


いつものロースカツ定食。私はひとに聞いたことを思い出しながら、付け合せのキャベツを食べた。少し、泣きながら食べた。

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93年1月生まれの三人で、ピューロランドへ行った。

初めて行ったそこで、視覚と聴覚に圧力をかけられながら、ディズニーとの違いについて考えていた。


ディズニーは夢が主体なのに対して、ピューロランドは現実的、かつ概念に重きを置いていた。

ショーで発せられる言葉は、思いやりとか優しいこころとか、そういった類のものだった。ミッキーだったら夢の国へさぁいこうとかだから、結構な違いだ。

 

ショーのお姉さんが持っているのと同じステッキを、ちびっ子たちのほとんどが持っている。

お姉さんが「このステッキには、思いやりの心が詰まっていま〜す!みんなで思いやりの心をくるくる〜!」みたいなことを言ったのをよく覚えている。

 

マイメロの乗り物は写真を撮ってくるタイミングが掴めず、バツマルの壁紙は少し剥がれていて、キティに抱きついたら体温があった。

ぜんぶ正解だと思った。

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一週間おきに更新するとか言ったけど、すぐに一か月が経ってしまった。

いろんなことがあった。その大体が書きたくないことなので、ひとつだけ選んで書く。

 

祖父が死んだ。84歳、肺炎だった。

運ばれたときの血中酸素濃度が、3年前に私が喘息で倒れたときの数値よりも低かった。

 

3年前に祖母が亡くなったときは、どうしても仕事を断れず葬儀に出れなかった。そのことがずっと悔しく、申し訳ない気持ちで、今回はどうにか行こうと思った。

深夜の高速バスの中では、ずっとおじいちゃんのことを考えていた。いわきへ近づくにつれ、空がおおきくなる。等間隔に並んだ街灯のあかりが、バスの窓越しに見えては瞬時に消えて行く。その間隔がちょうど聞いていたsubmerseの拍子とぴったり合う瞬間があってうれしい。友部SAで吸うたばこは美味しかった。

 

全部がはじめてだった。

棺にからだを入れる際、おじいちゃんの利き手を初めて知る。

私と同じ、左利きだった。

 

お盆に並べられた別れ花を手に取り、それぞれの花の名前を心のなかで唱えながら、おじいちゃんの顔の周りを花でいっぱいにしていく。最後、かすみ草をゆりと菊の隙間に入れる時、自分なりに工夫をした。

普段は花をみるとその種類によって様々な記憶が蘇ってくる。今回はそれがない。

 

思っていたよりも大きく、冷たいからだ。遺影のおじいちゃんがこっちを見ている。

この写真が、私が撮った写真だったらよかった。と思った。

おじいちゃんのことは、二枚くらいしか撮ったことがない。

 

おじいちゃんのお骨はとても立派だった。

私の骨はどんなだろう。

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歩きながら顎をぐっとあげる。

ここは東京駅、夜空の紺に高層ビルの灯り。
数秒後、灯りは滲み、放射状に広がっていく。

目薬によるものなのか、本当に泣いているのか、自分でもわからない。

私は、あかるいところへ。

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ツナとしめじと新玉ねぎのパスタ たっぷりのオリーブオイル 食べる直前のレモンが重要 新しく買った食器を初出動した 好きな食器でたべるごはんはおいしい

 

カレー 普通のが食べたくて、説明書き通りに作る アクを取る、という作業が結構好きだと自覚 れんこんが余っていたので入れた 忘れた頃にさっくりが訪れてたのしい

 

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夢。

 

巨大な一軒家。いつでどこなのかはわからない。リビングには光、晴れであることはわかる。

アクセサリーの広告撮影の現場だ。

ディレクター、モデル、マネージャー、ヘアメイク、スタイリスト、美術監督、編集者、手伝いで集められた若い男女、そして、撮影を担当する私。
ヘアメイクが1時間押し、そして美術の準備が終わらず、撮影が一向にはじめられない。

タバコを吸いに一度外へ出る。二本続けて吸って、そろそろ始まるのではないかと撮影場所に戻ろうとするが、歩いても歩いてもたどり着けない。ここはどこなんだろう。写真を撮りに行かなくちゃ。あれ、カメラはどこに置いたっけ。私の電話が鳴っている気がする。なのに見当たらない。こわい、どうしよう。

少し経って、ここは一軒家ではないことに気がつく。


私は巨大な競技場の真ん中にひとり立っている。

 

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最近感じた印象的な光について。

 

京都の骨董屋で購入した、ソフトボールくらいの大きさのサンキャッチャーを窓辺に置いた。

壁、フローリング、天井、40Wの電球、写真集、ドライフラワー、貝殻のオブジェ、昨日飲んだ缶ビール、静岡の海で拾ったおおきな石、大人買いしためぞん一刻

晴れの昼、太陽のおおきく真っ白な光を受けて、部屋じゅうに虹色の玉がひろがっていく。

飼っている文鳥の鳥かごにもそれはあった。臆病な鳥は慌ただしく籠の隅に移動して、その虹を不思議そうに眺めていた。

吉岡徳仁氏のスペクトルよりも、この部屋が好きだなと思った。

 

二階の洋室には、日中ずっと光が入る。

午前の仕事を終えて帰宅。窓の形そのままの直射日光に大きなクッションをのせて、ゆっくりと仰向けになる。私の知りうる最高の昼寝がはじまる。部屋着を通して伝わるフローリングの硬さと温度が気持ち良い。加えて、穏やかなゆめ。

時間を経て移動する光に合わせて、うとうとしながら自分自身も移動。ひとしきり身体が休まったころ、太陽は傾き、光は壁へ逃げていく。すべてが良い塩梅だ。

 

私はアニメをほぼ通ってこなかった。ちゃんと観た記憶があるのはナルトとかまるこちゃんとか。あとはジブリくらい。そんな私が、最近になってアニメの魅力に気づき始めている。友達とNetflixのおかげ。

単純にストーリーが面白いというのもあるけれど、アニメでしか出来ないものことがたくさんあるということを知ったのが大きい。それは人物の動きだとか非現実的な演出だとか色々。中でも光の使い方に魅了されている。

例えば、画面の前にいる人物は順光なのに、背景の建物は逆光になっているとかそういうもの。意図的に、けれどさりげなく太陽を増やしてしまう。なんて素敵なことなんだろう。

そういったシーンを、何度もなんども見返している。アニメから受ける影響は大きい。

 

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何かを買って帰りたい気分だった。

吉祥寺のだいすきな古本屋さんへ。写真集の棚で見つけた、上田義彦さんが撮った伊東美咲さんの写真集を買おうと思っていたとき、一冊の絵本が目にとまった。

タイトルは「ミッフィーフェルメールさん」。ミッフィーミッフィーのパパが、故郷の同じフェルメールの名画を紹介していくもの。即決。写真集を棚に戻し、絵本を抱えてレジへ。

 

「こんなおうちで くらしたら たのしそう。おおきな まどが たくさんあって」

「このおんなのこ こっちをみたのは よばれたからかな。それとも さようならっていうためかな」

極めてシンプルなまなざしでページは進んでいく。

 

これでいいんだよなぁとしみじみした。有名だからすごい絵だとなんとなく言ってしまったりだとか、知識を振りかざしての解釈だとかそういうのじゃあなく。子どもの目は正しく素直で新鮮で、時に大人を圧倒する。

 

子どものころからミッフィーがだいすき。絵本やアニメーションを観て、彼らの横顔が見れる日はくるのだろうかと、ずっと思っていた。けれど、ついこの間デスクの端にいるミッフィーの貯金箱を冷静にみて、その時がきてしまった。なんだか切なかった。私は知らない。ミッフィーの横顔を知らない。 

 

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最近悩み事がどんどん増えている。

でも大丈夫、なにも怖いことはない。先走って咲いた春の花を見つけることができる。水道代が前の月より安かった。ポッケの中のシルバニアがかわいい。iPodをシャッフル、一曲目が麻丘めぐみでその次がメルツバウだった。タートルネックのニットと靴下の色が合っている。洗濯物を干したらクリップをちょうど使い切った。今日も検索が上手。リュックにはいつだってトランプが入っている。強い風が吹く、冷気がほっぺたを刺す、まつげが揺れるのがわかる。私はいますぐに走り出したい。

 

よし。

 

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豚肉のマヨポン炒め 安売りだった豚こまと冷蔵庫で寂しそうにしてる残り野菜をマヨとポンで適当に炒めたやつ 最近こればっかり 美味しいけれどそろそろ飽きるかな

コンビニのドリア 酔っ払って帰宅 忘れていた空腹を思い出す 作る元気も材料もなし 裸足にビーサンで近くのコンビニへ 数滴のタバスコで幸せが訪れる

 

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夢。

 

ここはニュータウンの裏山、高校まで通っていたテニスクラブ。

当時のクラブメイトたちが、サーブの練習をしている。

程なくして、コートの中に猫がたくさん集まってくる。

私はそれを空から眺めている。

その様子をSNSにアップしようと、ポケットからスマートフォンを取り出し、動画を撮ろうとするのだが、光の調整や画角が上手くいかず、一向に撮影することができない。

私の存在に気づいた猫たちが、一斉に私の元へ飛びついてくる。

確か6匹、シャムだとかスコだとかいろいろ。

それぞれが違う言語、私の知らない言語で語りかけてくる。

なんとなく、言わんとしていることがわかる。

 

どうやら私以外のみんなには、猫たちが見えていないらしい。

 

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誕生日がきて、24歳になった。

 

前夜、友人3人と井の頭公園で花火をした。ドンキホーテには、この季節でもちゃんと花火が売っている。

一緒に購入したチャッカマンが一瞬で壊れたり、花火を口にくわえて走り回ったりした。

目の前で拡散する赤だとか緑のひかりはとても綺麗だったが、煙でむせ返ってしまった。

 

 

 

とにかく楽しかったのを覚えている。

こういう時間がずっと続いて欲しいとは正直あまり思わない。

続くと不安になってしまうから。

けれど、たまにあって欲しいなと思う。

 

誕生日当日は特に予定を立てていなかった。

悩んだ末に、池袋のホテルを勢いで予約。直後に虚無になる。

会いたい人たちに会いに行って、ずいぶんと酔っ払い池袋に着いた。

慣れない街を歩くのは居心地が悪く、32階からみえる夜の街はあまり感動的なものではなかった。

ここよりも断然素晴らしい景色がみえる場所を、私はいくつも知っている。

 

24歳になったけれど、実感もなければ特に焦りもない。

いつだって、時間のとおりに物事は進んでいくのだから。

 

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いわきに帰省した。写真についてのあれこれを進めるために。

 

高1の頃付き合ってたひとと7年ぶりに再会。

次の予定まで、お茶をすることになった。

相変わらず良い目と声を持ち、真面目でさっぱりとしていて、とにかくよく笑う。

いろんな要素が当時のままで、とても安心した。

 

薬剤師になりたての彼女は、ラキソベロンという下剤の、名前の由来を教えてくれた。

想像のとおりなので書かないでおくけれど、やっぱりどんな仕事にも楽しみはあるのだなぁとぼんやり思った。

 

彼女は私のいろんな言動をみて、終始不思議そうに笑っていた。

変なひとだと思われているのだろうか。

なにも変わらない、ふつうの人間なのに。

 

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木村家はいま、大きな壁を乗り越えようとしている。

そんな状況でも、トイプードルのウェンディさんはちゃんとかわいい。

ごはんやおやつのとき、「浅田〜真央〜」と言うとくるりとまわってくれる。

この芸は母親が仕込んだのだが、どういう気持ちでウェンディはまわっているのだろうか。

 

母親のメニエールと突発性難聴の症状は、日によってまちまちらしい。

この日は良くない日で寝込んでいた。

そんな状況にもかかわらず、私が帰ると煮物を作ってくれた。

母親の料理はほんとうにおいしい。

どうがんばっても、この味にたどり着くことができない。

 

症状が強く出ているときは、硬い音が脳に響いて苦痛なのだそうだ。

父親は優しさがから周りして、聴こえるようにと大きな声ではっきりと母親に話しかけていた。

私は声色に気をつけてとこっそり父親に注意をする。

やさしくまるい声で話せば、大きくなくてもちゃんと聴こえるんだよ。

父親は私に、「かなわないなぁ」と言った。

 

そうそう、その声だよ、と思った。

 

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甘酒 実家で分けてもらった大吟醸酒粕に、いっぱいの砂糖とすこしのお塩 大さじで砂糖をすくうたびに、なんだか惨めな気持ちになった けれど飲む点滴は素晴らしい おちつく

卵かけごはん 塩昆布をのせて、ごま油をすこし垂らすのが最近のブーム

角煮 ネットで見つけた炊飯器で作るやつを試した 確かに楽だけど、普通に煮込むのと同じくらいの時間がかかるし、炊飯器が油まみれになったのであまり感動はなかった 味は最高

 

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夢。

 

日本のどこかのスラム街、分厚い雲、いくつかの切れかけた電球。

例えるならば、岩井俊二監督の『スワロウテイル』のような場所。

 

目の前に、殴りたい人間がいる。

現実では会ったことのない、知らない人間。

 

殴りたいのに殴れない。

グーを素早く伸ばそうとすると、低反発のクッションにゆっくりと手を鎮めるときのような感じになってしまう。

 

殴りたい、殴れない。

 

起きると大量の汗。

 

いま思い返すと、サンシャイン池崎に似ていたなと思う。

サンシャイン池崎だいすき。

 

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いまも交友のある数少ない幼馴染から連絡があった。

 

「いまどこ」

「吉祥寺、バス乗ったとこ」

「青春のギターを手放すので、写真を撮ってくれないか」

「いつ」

「いま」

「わかった」

 

私は帰ろうと乗っていたバスを降りた。

 

吉祥寺の、大好きな屋上へ彼を呼び出す。

16時50分、太陽は山に隠れ、洩れた橙が空の青を食べ始めている。

サイズの合わないハードケースから黒のリッケンバッカーを取り出した彼は、泣いていた。

 

フェンスのそば、この屋上の中で、一番夕焼けに近いところ。

彼をそこに立たせ、好きに弾いて歌って、とだけ伝えた。

小さく泣きながらこのギターで作った曲を歌う彼、残り少ないフィルムの入ったカメラでたいせつにシャッターを切る私。

 

懐かしい歌声、コードを押さえる手が震えていた。

とても良い歌だった。

ピントを微妙に外した気がする。

それでいいな、それがいいなと思った。

 

こういう依頼がもっと増えたらいい。

依頼者が直面している、切実さが滲み出るものことを撮りたい。

 

あのときのフィルムを、私はまだ現像できずにいる。

 

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自転車に頻繁に乗るようになってから、乗らない日がとても貴重に思えるようになった。

 

丈の長いコートを着て自転車に乗ると、タイヤに裾を擦ってしまうから、泥除けを付けようかと思ったこともあった。

けれど、この小さな貴重さがとても愛おしいことが分かったので、やっぱり泥除けはやめることに決めた。

 

今日は乗らない日。
お気に入りの茶色いコートを着て信号を待つ。

 

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カメラのシャッターボタンに、ポムポムプリンのぷっくりシールを貼った。

撮るたび忘れていたシールの存在を思い出して、ひとりで笑ってしまう。

 

どんなに緊張する現場でも、ポムが穏やかな気持ちにさせてくれる。

なんて最高なことなんだろう。 

 

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昨晩のクリームシチューの残り シチューも一晩経つとさらにおいしい けどお肉がほぼ残っていなくて寂しかった

天津飯とエビチリと豆苗炒め、あと少しのお酒 友人と吉祥寺の300円中華へ 最近はだいたいここ  安くておいしいというのは幸福度が高い 申し訳程度のお通しがかわいい

 

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夢。

 

新型車椅子の試乗会場にいる。

足の不自由な人々が思い思いに車椅子を試す中、私は一台の車椅子を盗む。

 

会場を車椅子に乗ったまま飛び出し、迷路のような道を巧みに進む。

新型のそれには、坂を自動で登る機能や、片方の車輪が浮く機能、そして手元のボタンを押すとピザが運ばれてくる機能がついていた。

 

私はいつのまにか全ての機能を使いこなし、軽やかに走っていた。ピザは冷めてた。

 

迷路を抜けると、海に出た。

車輪が砂浜に沈む、心地よい重みを感じながら、かばんの中からカメラを取り出す。
写真を撮る。
私は車椅子に乗っている。

いつもとは違う目線でものが見えていることに感動する。

海はとても大きかった。

 

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家の近くをゆっくりと歩いた。

 

お気に入りのスニーカー、ソールが少し剥がれてしまっていて、歩くたびにぺたべたと気持ちが悪い。

 

民家の窓の前に、赤く華奢な花が咲いていた。

西日の時間、橙色の光といくつかの影。

窓際には赤と緑のポリタンクが置かれていて、その部分だけカーテンがめくれている。

 

私は泣いた。

たぶん私の心の状態と、その光景がぴったりと合わさったのだと思う。

笑えるくらいたくさん涙が出た。

10分ほど、そこから動くことができなかった。

 

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西武線の窓から、もう少しで沈む太陽を眺めている。

東京の、東京の何層にもなった建物が、時々たまに完璧な隙間を開ける。

今日さいごの太陽が、私の目めがけて飛んでくる。

それは記者会見のフラッシュのように、ぱちぱちと車内のひとびとをあかるくしていく。


冬の光が好きだ。
光のもとへ移動して、じぶんの目が、髪が、白く光るのを想像する。
身体の奥が、じんわりと温まっていくのがわかる。
 
もうすぐ、1日の中で一番好きな時間がくるのだろう。

 

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カレーうどん 昨日のカレーの残りにめんつゆとかいれた 少ししょっぱかった

豆乳のリゾット 炊飯器のちょうしが悪く硬く炊けてしまったので チーズをたくさんいれた

 

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夢。

実家、季節はたぶん今とおなじ、時間は朝の8時くらい。

リビングの出窓から朝日が入り、ベージュの壁やカレンダー、そして母親の背中にレースカーテンの模様が映る。

窓が少し開いているので、カーテンがやわらかく揺れている。

 

「朝が余っている!朝が余ってるんだよね!」

私は母親に主張する。

 「残さず食べなさい」と母。

 

 

懲りずに主張する私。スルーし続ける母。

 

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去年の春に自転車を買った。

はじめて、自分のお金で自転車を買った。

 

BRUNOの700C。

中古なのでところどころ弱っている。

深緑に白を少し足したような色の、私は速くかわいく走りますって言ってるような自転車。

泥除けなんていらない。

ずっとこういうのに憧れてた。

 

手元にきたままの状態で半年以上走り続けていたのだが、ついにすり減り切ったタイヤがだめになってしまった。

 

今日、ベージュだったそれを、ブラウンの細めのものに交換した。

ついでにガタついていたギアも調整してもらう。

とてもかっこいい。愛。

 

自転車屋さんの帰り道、前の太いのに比べると走り心地が違うことに気付く。少し怖い。

太い気持ちのまま走ったら簡単に事故に遭いそうだ。

特に、車道から歩道に上がる段差に乗るときの感覚が大きく違う。

 

たくさん走って、はやく慣れなければ。

 

いままでの弱った姿に比べると、とても元気そうに見えた。嬉しいって言ってる。

ようやく綺麗にしてあげれてうれしい。

 

こうして生活が進んでいく。

 

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アメリカンスピリッツを1/4くらい吸ったところでもみ消す。

 

それが出来るようなひとになりたいと思ったことがある。

当時はたしか、そんなひとは、余裕のあるひとだと思ったのだった。

いまはそうは思わないのだけれど。

 

私はキャスターの3ミリを、フィルターのぎりぎりまで吸う。吸い終えたら、包みたての餃子をフライパンに並べるときみたいに灰皿の端から置いていく。

 

並んだ吸い殻をみて、とても綺麗だなと思う。

 

一見なんでもないもの(むしろ汚いものでもいい)が綺麗に見える瞬間に立ち会ったとき、大きな快感を覚える。

 

例えば、茶色く濁った沼に反射する太陽光。

 

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朝と昼

きなこもち、昨日作ったお雑煮の残り おいしかった、満足

豚肉の生姜焼き もう少し焼き目をつけたらよかった あと水分を飛ばしすぎた

 

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